ルピシア グルマン通信2・3・4月 Vol.99 ルピシア グルマン通信2・3・4月 Vol.99
冬にいただく、あったか料理 冬にいただく、あったか料理

今号のテーマは『冬にいただく、あったか料理』。北海道産の旬の食材をフィーチャーし、毎月さまざまなメニューをご提案してきた『ルピシア グルマン』の植松シェフが過去のメニューを振り返るとともに、『ニセコ料理』のこれからについて語ります。

南仏プロヴァンスでの体験

植松:昨年6月に南仏プロヴァンスにご一緒した時、いろいろな庭のハーブを見て興奮されていましたね。

狩野:はい、家々の庭にあるハーブが極々自然で、しかも皆樹木のように大きいのを見て「これよ! これ!」って。同時に、どうしたらこんな立派なハーブガーデンをニセコで再現できるかって、真剣に考えてしまいました。

植松:こんなに自然豊かなニセコなのに、また庭に自然を再現するのですか。

狩野:ハーブガーデンは世界観が違うんです、自分の思いを表現する空間というか。それにプロヴァンスとニセコって、ちょっと風土が似ているところがあって。変な言い方ですけど、ニセコらしいプロヴァンス風の庭が再現できたらいいなって。私の夢ですね。

植松:狩野さんはご自身でもハーブを使ったワークショップを主催されていますが、どんなことをされているのですか。

狩野:最近は「健康」がキーワードです。参加者にリピーターも多くて、年を重ねられて血圧やコレステロールなどの悩みを抱える方が少なくありません。そうした方々から「お薬を飲む前に、何かできることがありませんか?」という声があって。私自身が生活の中で試し、実感を持てたハーブの活用法や考え方などをご紹介したりしています。

植松:狩野さんみたいな方に相談できるのは心強いですよね。

狩野:でも、まずご自身で考えることが必要です。自分にとって何が大切か、続けられることはいったい何か?それを一緒に考えます。特別なことではなく、毎日の食生活を見直すことで、体は変わっていきます。その際にハーブやスパイスがとても“いい仕事”をします。おいしく食事が摂れる。楽しく食事を作れる。そうすることで健康管理に役立つ。この三要素の三角形のバランスが良くなると、体の調子も整っていくんですよね。

植松:もう少し具体的に教えていただけますか。

狩野:たとえば、薬膳や漢方の考え方で、栄養価とは別に体を温める食材と冷やす食材というのがあります。季節や体調に合わせ、そうしたことも考えながら食材を選んだりすることもご紹介しています。食材選びから楽しめる生き方をすれば、食事もすごく楽しくなるはずです。お腹を満たすために食べるのではなく、生きる喜びのために食べることが大切だって思います。

南フランスの旅 南フランスの旅

生き生きと葉を茂らせるハーブの数々に、狩野さんは感動。料理に自然に添えられたり、お皿にも描かれるハーブたちを見て、いかに暮らしに溶け込んでいるかを実感したそう。(写真提供:狩野亜砂乃さん)

一年を通じてハーブを楽しむ

狩野:冬の間は植松さんはどんな風にハーブをお使いですか。

植松:夏と違って使えるハーブは限られますが、秋のうちに乾燥させたり、ビネガーやオイルに漬けたりして、保存しておきます。冬の間は味ののった根菜類にそうしたハーブの香りを加えて、春に思いを馳せる。フレッシュが使えない時期だからと不満に思うのではなく、それはそれで自然な行いだと思っています。

狩野:年間を通してハーブを活用するというのは、私にとっても理想のハーブライフです。春から夏はフレッシュハーブを、また冬に備えてハーブをビネガーやシロップに漬けたりすることなど、一年を通じて自分の育てたハーブを楽しむ方法をお伝えしています。

植松:ところで大好評をいただいた「エルブ ド ニセコ」(2019年9月号掲載のミックスハーブ)って、狩野さんの失敗経験から生まれたって本当ですか。

狩野:はい(笑)、私にもハーブを乾燥させてはおいたけれど、そのままゴミ箱行きとなってしまった経験はあるんです。そうした失敗を経て、使いやすいように刻んだり、好みにミックスしたり、スパイスや塩を加えてみたりの試行錯誤を重ねました。「エルブ ド ニセコ」をかけるとなんでもおいしいという方がいらっしゃるそうですが、そういう体験があるとハーブに対する認識が変わると思います。フレッシュハーブだけがハーブではなく、いろいろな可能性があるんです。

家族への投資

狩野:レストランのシェフって、どうやってメニューを広げているのですか。

植松:やはり外へ食べに行くことが一番刺激になります。国内外を問わず、実際に現地へ行くと空気や住んでいる人、建物、あらゆるものすべてに影響を受けます。それをニセコへ持ち帰り、さてニセコではどうしようと考えています。あっ、先ほどの狩野さんのニセコのガーデン造りに似ていますね。

狩野:私も外食をおすすめしているんです。おいしいものを食べないと刺激を受けないし、工夫ができない。外食を贅沢だとか、無駄遣いとは思わないで、自分のための投資だと思ってほしいって。プロヴァンスへ行ってあらためて思いました。本物を知らないと真似もできない。心が豊かになると生活が楽しく広がる。味覚とか嗅覚というものは子供のうちから育ててあげたい。おいしい外食は家族への投資です。私も、植松さんのお料理をいただいて、いつもハッとするんです。

植松:なるほど、この「グルマン通信」のようなお取り寄せグルメの誌面にも同じ役割がありますね。僕もうっかりしていると、同じような食材の組み合わせを選びそうになることがあります。そんな時、狩野さんからハーブやスパイスなどの新しい情報をもらうと新しい道が開けたりする。いつもいい刺激をいただいていますよ。

おいしく体を温める・・・ショウガ おいしく体を温める・・・ショウガ

狩野亜砂乃さんの「おいしく体を温める・・・ショウガ」