前座はお茶に悪戦苦闘
落語は、噺家(はなしか)がすべての登場人物を一人で演じ分けて話す伝統芸能です。噺の最後に必ず「落ち(下げ)」があるので落語と呼ばれるようになりました。
その落語を間近で楽しめるのが寄席(よせ)。楽屋裏では、「前座」と呼ばれる噺家の卵たちが、師匠方に慌ただしくお茶を出す姿が見られます。前座とは、東京の落語界にある3つの階級(前座、二ツ目、真打)の一番下の人たち。楽屋でのお茶出しや、師匠方の着付けの手伝いなど、楽屋仕事はすべて前座が行います。
「前座修行で一番苦労したのは、お茶出しですね」。こう語るのは、約4年の前座修行を経て、昨年、二ツ目に昇進した三遊亭(さんゆうてい)わん丈(じょう)さん。
わん丈さんが見せてくれた一冊の名鑑には、数百を超える師匠ごとに、お茶を出す際の注意点を書いたメモがびっしり!好みの温度や濃さ、お茶出しの回数、湯呑みを置く位置などが細かく記録されています。