ルピシアだより 2018年8月号
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ハーブティーのある暮らし

暑い夏を元気に過ごすには、心身の健康が欠かせません。今月は、「自然の薬」としてフランスで今、再び脚光を浴びているティザンヌ(=ハーブティー)の魅力をご紹介します。

日本との違いに驚く

「カフェ(コーヒー)がいい人? ティザンヌがいい人?」。フランスでは、大勢の友人たちを家に招いてディナーを楽しむことが多くありますが、食後にホストがゲストに聞くお決まりの質問がこのフレーズです。ティザンヌとは、いわゆるハーブティーのこと。茶の木(カメリアシネンシス)から作られるお茶「thé(テ)」以外の、カフェインを含まない全てのお茶を指します。

フリーアナウンサー 中村江里子さん フリーアナウンサー
中村江里子さん

「私は、日本ではあまりハーブティーを飲む機会が無かったのですが、フランスではとにかくティザンヌが人々の生活に根付いていて驚きました。食後にはティザンヌなんだなと大発見した気分になりましたね」

こう話すのは、2001年からパリに拠点を移して活動しているフリーアナウンサーの中村江里子さん。フランスでは、スーパーでも何種類ものティザンヌが手頃な価格で販売されていますし、レストランやカフェのメニューにも、必ずティザンヌがあります。

「パリに住み始めた当初、我が家には紅茶や日本の煎茶、焙じ茶しか置いていなかったのですが、食事に来た友人たちに毎回リクエストされるのがティザンヌ。これは大変ということで、我が家にも数種類のティザンヌを常備するようになりました」

ハーブは時代遅れ?

よく知られている通り、薬草(ハーブ)は、古代からその有効性が認められ生活の中で使われてきました。風邪の気配がしたらタイムを煎じ、眠れない夜はヴェルヴェーヌやリンデンのティザンヌを飲む。火傷にはラベンダーの軟膏を塗り、切り傷にはローズマリーの精油を一滴。フランスでは、こんな風にハーブの知恵が暮らしの中に溶け込んできた歴史があります。

医療の世界においても、1940年頃までは植物療法が主流でした。全盛期には「エルボリストリ」という薬草専門店がフランス全土に約2万軒あり、国家資格を持つ薬草専門家「エルボリスト」が数百もの薬草を調合して販売していました。

しかし1941年には法改正でエルボリストの国家資格が廃止。1950〜1960年代に化学療法が全盛期を迎えると、伝統的なエルボリストリは減少の一途を辿ります。植物療法の衰退に伴って、フランス人にとってのティザンヌのイメージも「お年寄りの飲み物」「時代遅れの古めかしいもの」と受け取られるようになっていきました。

食べ物こそ最良の薬

ところが、2000年代に入り、ティザンヌのイメージが大きく変わり始めています。フランスでお茶やティザンヌに関する著作を多数執筆しているリディア・ゴーティエさんによると、ここ十数年で、フランス人のティザンヌへの興味や関心はどんどん回復。風味の良さはもちろん、カフェインや砂糖を含まないことが好まれて、若い世代でも消費が伸びています。また近年では、若いハーブの生産者も増えています。

お茶の評論家 リディア・ゴーティエさん お茶の評論家
リディア・ゴーティエさん

「若者たちは、先入観を持つことなく様々な種類のティザンヌを飲んでいます。最近はルイボスやハイビスカスなど新しいハーブが大流行しているんですよ」

今、再びフランスでティザンヌが注目されるようになった理由について、ゴーティエさんは健康志向の高まりと植物療法への回帰が背景にあると分析します。

「ヨーロッパでは長い期間、近代的な医薬品が最善の治療法だと思い込んできましたが、人々は食べ物こそが最良の薬だと気づき始めました。病気の予防として、野菜やフルーツ、オーガニック食品など、健康にいいものを選んで消費しています。ティザンヌもその一つとして親しまれているのです」

心を癒す南仏の景色

ルピシアのパリ店でもたくさんのティザンヌを扱っていますが、特に人気なのが「プロヴァンス」です。フランスで愛される国民的ハーブ、ヴェルヴェーヌを中心に色とりどりのハーブをブレンドしたもので、10年前に日本で期間限定販売した際にも、大好評をいただきました。

その「プロヴァンス」を、今回日本で復刻販売します(詳細はこちら)。ブレンドにあたってイメージした南仏プロヴァンスは、美しい自然に囲まれたリゾート地。夏のヴァカンスでは多くの人々が太陽を求めてこの地を目指します。

フランス政府公式の語学学校・文化センター「アンスティチュ・フランセ東京」のグザヴィエ・ゲラール館長も、今年のヴァカンスはプロヴァンスで過ごす予定なのだそう。その魅力を嬉しそうにこう教えてくれました。

アンスティチュ・フランセ東京 館長グザヴィエ・ゲラールさん アンスティチュ・
フランセ東京 館長
グザヴィエ・ゲラールさん

「ここをドライブしているとラベンダーやタイム、ローズマリーなどハーブの爽やかな香りに包まれて、とっても気持ちがいいんです。フランス人にとって、1〜2カ月にもわたる夏のヴァカンスは、何よりも大切な休息の時間。友人や家族と語らい、自然や文化、芸術に触れながら、ゆっくりと心と体のエネルギーを蓄えるんです」

晴れ渡るプロヴァンスの青空の下、清々しい風に吹かれながらのんびり過ごす豊かな時間――。そんな風景に思いを馳せて、この夏はおいしいティザンヌで心も体も健やかに過ごしませんか。

WEB限定インタビュー
ティザンヌとわたし ティザンヌとわたし
「プロヴァンス」を飲んだ感想も聞いてみました!
ルピシア パリ店 おかげさまで5周年 ルピシア パリ店 おかげさまで5周年