主要輸出品だったゆり根
ゆりは北半球、アジアを中心にヨーロッパ、北アメリカなどに広く分布する植物で、100種以上の原種があると言われています。鱗茎(りんけい)と呼ばれる、いわゆる球根を持ち、夏に美しい花を咲かせます。西洋では聖書に登場する花のひとつ。キリスト教において白いゆりは「純潔」の象徴として用いられ、聖母マリアの象徴としてしばしば宗教画の中にも登場します。
また日本や中国では古くから食用や薬用として球根=ゆり根が用いられ、漢方薬としては滋養強壮、咳止めなどに効果があるとされてきました。
日本でゆり根がいつごろから食されていたのかは定かではありませんが、江戸時代にはその記録が残されています。江戸時代に来日した医師シーボルトや植物学者ツンベルクなどが日本からゆりの球根を持ち帰り、欧米に紹介すると、その華麗な花は大変な評判を呼びます。幕末から明治初期にかけ、園芸用の日本産ゆり根は絹などと同様、日本の主要輸出品として欧米へ向け、たくさん輸出されたそうです。