ルピシア グルマン通信11月 Vol.104 ルピシア グルマン通信11月 Vol.104
紅麹(べにこうじ)の甘酒 紅麹(べにこうじ)の甘酒

今号のテーマは『紅麹(べにこうじ)の甘酒』。北海道産の旬の食材をフィーチャーし、毎月さまざまなメニューをご提案してきた『ルピシア グルマン』の植松シェフが過去のメニューを振り返るとともに、『ニセコ料理』のこれからについて語ります。

狩野さんの甘酒

植松:狩野さんが作られた紅麹の甘酒を一口食べたときに「おいしい!」って思ったんです。いよいよ、その再現に挑戦するのでワクワクしています。狩野さんは随分と甘酒を愛飲しているとお聞きしましたが、どのようなきっかけで?

狩野:もう3、4年になりますか……私は夏場、食欲が落ちてしまうんです。無理をして食べるとお腹を壊す。そんなとき甘酒に出会い、飲み始めました。

植松:最初からあのレシピだったのですか?

狩野:いいえ、我が家では甘酒といえば、ひな祭りに飲む酒粕の甘酒を意味していました。私は酒粕が苦手なんで、最初は白米と米麹で作りました。そのうち甘さに飽きてしまい、玄米を加えてみようと。私はなんでも実験してみたい性分なので(笑)、玄米麹を足してみたり、いろいろな段階がありました。

植松:そうした中で紅麹に出会ったと?

狩野:はい、紅麹の働きが自分の体調の改善のために必要だと思い、試してみたところ、程よい酸味が出て、ものすごくおいしかった。それはもう「誰かに教えたい!」というくらい。植松シェフにご紹介したとき、シェフはすごいことをおっしゃいましたよね?

世界が求める理想の酸味

植松:はい、「これは今まさに世界中の料理人が求めている味だ!」って(笑)。ここ最近、料理の世界では発酵食品がブームです。世界中の料理人が発酵による新しい酸味を追求している中で、狩野さんの甘酒は大袈裟でなく、まさにそれでした。甘みと酸味って相性は良いのですが、バランスを取ることが難しい。狩野さんの甘酒は無理に合わせたような感じがなく、自然に体に入ってくるような印象がしましたね。

狩野:シェフにそう言っていただけると素直にうれしいです。

植松:いえいえ、本当です。ところで教えていただいたレシピですが、とても手間がかかりますね。

狩野:普段、私が自分で作る際には、あまり計量などしません。今日はコレをこのくらい?とか、毎日の繰り返しの中でおいしいと思えるレシピが出来上がりました。ポイントは手間を惜しまないこと。たとえば、5時間保温するより10時間のほうがおいしければそうします。それと「おいしくな〜れ」と声をかけてあげるとか(笑)。

植松:それは重要ですね(笑)。それにしても使用する素材がたくさんあって、個人で集めるのは大変でしょう。米麹、玄米麹に白米、雑穀、もち米、それに紅麹。そこへさらに食感を良くする「熟成玄米」まで加わる。これらが足し算ではなく、掛け算的なおいしさを生み出しています。これはもう「プレミアム」と言っても過言ではありません(笑)。

狩野:はい、まさに「プレミアム」だと思います(笑)。

無限の可能性

植松:普段、狩野さんはどうやって召し上がっているのですか?

狩野:私は朝ごはんの代わりにスムージーにすることが多いです。バナナや季節の果物、きな粉、ヨーグルト、豆乳、野菜ジュースなどを、その日の気分でアレンジします。

植松:私の身近にも朝食に甘酒スムージーを飲んでいるというスタッフが何人かいます。狩野さんの甘酒は食感が独特で「食べる甘酒」のようなのがおもしろいですね。

狩野:それと、私は料理に甘みが欲しいときにこの甘酒を使います。塩コショウのように冷凍庫にいつも常備しています。お肉の下味に使ったり、辛いカレーに足したりするのが好きです。

植松:たしかに調味料としての可能性もありますね。自然の甘み。甘酒って甘いのですが、後味がベタベタせずにキレがいい。甘酒の概念が変わる狩野さんの紅麹の甘酒。ぜひ多くの方にお試しいただきたいですね。

紅麹と甘酒の魅力について 紅麹と甘酒の魅力について

生き生きと葉を茂らせるハーブの数々に、狩野さんは感動。料理に自然に添えられたり、お皿にも描かれるハーブたちを見て、いかに暮らしに溶け込んでいるかを実感したそう。(写真提供:狩野亜砂乃さん)