キクイモとは
日本ではまだなじみの少ないキクイモは、北アメリカ原産のキク科ヒマワリ属の多年草です。夏の終わりから秋にかけて、河原や草原などで咲いている、ヒナギクやコスモスに似た黄色い花を知っている方も多いのではないでしょうか?
このキクイモで、食材として利用されるのは、イモや生姜などによく似た形の地下の部分(塊茎=かいけい)。食物繊維が豊富で、デンプンをほとんど含みません。若いツボミを食用にするキク科の高級食材、アーティチョークに似た独自の芳香からエルサレムアーティチョークとも呼ばれ、欧米ではバターでソテーしたり、スープの具材として使われています。
キクイモとの出会い
私の研究テーマは「ヤマイモの成分と加工性について」でしたが、大学で講義などを担当していたのは食品製造学です。実際に企業や生産者と、商品としての食品の開発に関わることが多くありました。
キクイモとの出会いは今から15年ほど前のこと。当時、北海道・音別町(おんべつ)の一人の農家の方がキクイモの健康機能に注目し、「もっと世間に広めていきたい」と相談されたのです。そのことをきっかけに、キクイモの加工利用についての研究を進めたり、勉強会を開催する、またレストランのメニュー開発などに広く取り組んできました。
イヌリンの力
近年、健康食品としてキクイモが注目されている最大の理由は、成分に含まれるイヌリンの利点が判明してきたからです。
お砂糖やデンプンといった炭水化物や糖質の仲間であるイヌリンは、人間の体内でほとんど消化されないことから、栄養学的には水溶性食物繊維の一種とされます。
体内に入ったイヌリンは、前後の食事による体内の血糖値の上昇を、おだやかな状態に抑えます。そのため、人間の体内で血糖値の上昇を押さえる働きを担うインスリンにならって、キクイモに含まれるイヌリンは別名「天然インスリン」と呼ばれています。
また消化器官を移動するイヌリンが、糖質のカスやゴミをからめとる作用や、最終的に腸内の善玉菌の栄養源となることで、いわゆる腸内フローラの環境を改善する働きにも注目が集まっています。
お茶がいちばん
キクイモに含まれるイヌリンは、生イモのままでは空気中の酸素と反応して成分が変化・減少するなど、気難しい性質を持っています。しかし、薄切りした干しイモを焙煎する「キクイモ茶」に加工することで、長期の保存が可能になります。
さらにお茶を抽出した後の残渣は繊維が豊富なので、サラダに加えたり、味付けして食べることができます。
水に溶けやすいイヌリンを体に取り込むもっとも良い方法の一つが、お茶として召し上がっていただくことです。糖質や血圧などのイヌリンの働きが気になる方や、ダイエット中の方は、特にお食事中や、その前後の日々の習慣として「キクイモ茶」を召し上がると良いかと思います。