取材スタッフが齋藤さんの元を訪れたのは、冷え込みの厳しい冬の日。案内された部屋に入ると、齋藤さんがたった今ブレンドしたばかりというお手製のお茶をいれてくださいました。
取材スタッフが齋藤さんの元を訪れたのは、冷え込みの厳しい冬の日。案内された部屋に入ると、齋藤さんがたった今ブレンドしたばかりというお手製のお茶をいれてくださいました。
――は〜。ほっこり甘くておいしいお茶ですね。
齋藤今日は寒いので、体を温めてくれる焙じ茶をベースに、炒った黒豆とクコの実、板藍根(バンランコン)(アブラナ科の植物の根)を即席でブレンドしてみました。黒豆もクコの実もアンチエイジングをサポートする食材ですし、板藍根には抗ウイルス作用があると言われているので、風邪の時期におすすめなんですよ。
――いやぁ、思いもよらない素敵なおもてなしに最初から心を掴まれました!
齋藤こんなふうに季節や体調、症状に合わせてレシピを作るのが漢方や薬膳の考え方です。漢方の範囲ってとても広くて、漢方薬だけではないんです。養生(ようじょう)といって、運動や食事、生活の仕方など大きな範疇(はんちゅう)で健康やエイジングケアを考えていくものなんですね。
――豆という食材は、薬膳でもよく登場するのですか?
齋藤しょっちゅう出てきます。漢方には人の体は気・血・水で構成されるという考え方があるのですが、全般的に、豆には体の中の水の巡りをよくする効果があります。余分な水を排除して、必要な水は再循環させてくれるんですね。特に冬場は、血行が悪くなって足腰に痛みやむくみが出たり、泌尿器系のトラブルも多い時期。豆類を意識的に食べて、水の巡りを助けてあげるのがおすすめです。
――豆にも、黒豆や大豆、小豆など色々な種類がありますが、それぞれに固有の効能もあるのでしょうか?
齋藤もちろん。例えば漢方では、黒色や赤色の食材は血を養い巡らせる働きがあると考えます。ですから黒豆などは、血行不良を起こしやすい冬場にぴったり。黒豆は「アンチエイジングの豆」とも呼ばれていて、お肌にもいいんですよ。
――それはいっぱい食べないと! ところで黒豆は大豆の一種ですが、黄色い大豆にはまた違った効果が?
齋藤ええ。黄色い大豆は胃腸を整えてくれるので、だるさや疲れが取れない方におすすめです。寒い時期なら昆布やひじきなど黒色食材と合わせて煮ると、血行改善も期待できます。逆に暑い夏場には、緑豆や小豆がよいですね。体の余分な熱を取ってくれるので、私は夏バテ予防に緑豆や小豆のお粥をよく食べます。また緑豆や小豆は、口内炎や吹き出物など炎症を抑えたい時にもおすすめですよ。
――ルピシアには、豆入りのお茶もあるのですが、豆の働きを存分に引き出すいれ方の工夫はありますか?
齋藤漢方薬の場合は、30〜40分かけてグツグツ煮出すのが基本です。お茶の場合そこまでとは言いませんが、少し長めに抽出した方がいいでしょう。ご自身でお茶に豆をブレンドする場合は、炒ったり煮るなど、あらかじめ豆に火を入れると成分が抽出しやすくなります。耐熱性容器に豆と少しの水を入れて電子レンジにかけるのでもいいですね。
――齋藤さんはかなりのお茶好きと伺いました。やはり漢方の考え方に基づいて、お茶も選んでいるのですか?
齋藤そうですね。例えば漢方では、緑茶は体を冷やす、紅茶は体を温める飲み物と考えられます。でも、だからと言って、冬は緑茶を飲んではダメという話ではないんですよね。
――というと?
齋藤もともと緑茶は、解毒効果を期待して食後に飲まれていたんです。お鮨屋さんで食後に「あがり」の緑茶が出てくるのもその流れ。実際、食前の空腹時には緑茶はあまり飲まれませんよね。空腹で飲むとお腹が冷えるし、胃を痛めることを昔の人たちは知っていたからです。でも逆に、体を冷ます緑茶の働きは、高ぶった気持ちをクールダウンさせたい時にはとても有効です。戦国時代、武士の間で茶道が流行りましたが、これも抹茶(緑茶)を飲むことで心を鎮め、心身統一を図っていたわけです。
――なるほど。つまりTPOに合わせて、上手に使ってあげることが大事だと?
齋藤そうなんです。薬膳では、これをしちゃダメだということは少ないんです。まずは季節や身のまわりの環境を理解して、自分の体調に気を配りましょう。その上で、食材たちの性質を理解して使いこなすのが漢方や薬膳の考え方。その人その人に応じて、臨機応変に楽しく取り入れていただけると、生活がより豊かになるのではないでしょうか。
美容やアンチエイジングに効果的なスーパーフードとして、海外セレブの間でも大注目のクコの実。そんなクコの実を使った手軽な薬膳紅茶を齋藤さんが教えてくれました。
@フタ付きの瓶にクコの実を入れ、浸かる程度までブランデー(またはお好みの酒)を注いで漬け込む。
Aブランデー漬けのクコの実をお好みの量、紅茶に入れて楽しみます。
「美容やアンチエイジング効果のあるクコの実は、お酒に浸けることで温める力もアップします。わが家では、甘い香りの紅茶に入れて楽しむのが定番。寒い日の夜、ちょっと贅沢な気分になりますね」(齋藤さん)