ルピシアだより 2019年10月号
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インド・コルカタ訪問記 魅惑のチャイ インド・コルカタ訪問記 魅惑のチャイ

スパイスが効いたインド式の甘いミルクティー「チャイ」。今月は、ルピシアのスタッフが本場インドで体感したチャイの魅力をレポートします!

いざ、インドへ

ルピシアだより取材班が降り立ったのは、インド東部の都市コルカタ。プープープー!! すさまじいクラクションを鳴らしながら車やバイクが縦横無尽に行きかう街を、呆気にとられながらも歩いていくと、早くもあちこちでチャイの露店や屋台を発見。気温35℃を超える熱気の中、大きな鍋からチャイの湯気と良い香りが立ちのぼっていました。

インドのチャイは、一般的なミルクティーとは違い、茶葉を煮出して作るのが特徴です。イギリス植民地時代の19世紀頃、インド産の上質な茶葉はイギリスヘの輸出に回ってしまうため、国内には品質の劣る茶葉しか残りませんでした。そうした茶葉でもおいしく飲むために考案されたのが、大量の砂糖とミルクを入れて煮出すチャイ。現地ではスパイス(マサラ)を入れたものが多く、マサラ・チャイとも呼ばれます。

衝撃のチャイ体験

取材班が最初に訪れたのは、現地のティーテイスターが一番のお気に入りだと教えてくれたチャイの店。早速注文すると、店主が早口で何かを尋ねてきます。

「んー……???(よく分からないけど)イ、イエス」

思わずうなずくと、出てきたのはサフランがのったチャイ。ええっ、チャイにサフラン!? 日本ではあまり見かけない組み合わせです。

一口すすってみると、さらにびっくり。甘さとスパイスを抑えた上品なチャイに、サフランの重厚な香りが押し寄せてくるではありませんか! おお……、まるでマハラジャの王宮に瞬間移動したような高級感。聞けばインドでは、普段よりリッチな香りを楽しみたい時や、結婚式などでサフラン入りのチャイが飲まれるとのことでした。

続いて取材班が向かったのは、日本人旅行客の間で話題の店。ここの名物は最後に振りかける魔法の粉。なんとインスタントコーヒーなのです。飲んでみると、確かに日本人好みで美味! 茶葉の味が濃く、ジンジャーがガツンと効いた濃厚なチャイに、コーヒーの香ばしさとほろ苦さがよく合います。

現地の方によると、コーヒーをトッピングしたチャイは、インド国内でも珍しいのだとか。それにしてもこの国で出会うチャイには、日本人の固定概念を覆す驚きがいっぱい。インドの人々は私たちの想像以上に自由な発想でチャイを楽しんでいるようです。

本場のアレンジを試してみよう!

おいしさの秘訣

今回私たちは、現地で人気のチャイ店を、時間の許す限り回ってみました。すると、繁盛店のチャイに共通するいくつかのポイントに気づきました。

第一に、紅茶の味が濃厚で、ミルクに負けていないこと。そのため、茶葉自体にコクと甘みがあるアッサム紅茶を使う店がほとんどです。しかも、より濃く抽出できるCTC(茶葉をつぶし、裂いて丸める製法。Crush, Tear and Curlの略)タイプの茶葉を使う店が大多数でした。

第二に、フレッシュで味の濃いミルクを使っていること。そのほか、高いところからチャイを注ぎ落とすアクションは、どの人気店でも行っていました。こうするとチャイが空気を含んで泡立ち、舌触りがなめらかになるのです。

こうした共通項の一方で、スパイスの分量や配合、甘さなどは店ごとに異なります。それぞれの店主が、店の味を決定づける独自のレシピに強いこだわりを持っているのが印象的でした。

インド人の誇り

インドの人々は、一日に何度もチャイを飲みます。仕事の合間は屋台や露店で、家では手作りチャイを楽しみます。「どの家にも母親のレシピがあって、季節や体調に合わせてスパイスやハーブを変えるんだ」と現地の方は話します。

チャイの好みには地域ごとの傾向もあり、例えば南インドの人は、ジンジャーをガツンと効かせた濃いチャイが好き。逆に北インドではマイルドなチャイが好まれ、スパイスは香り付け程度なのだそう。

地域ごとに好みがあったり、おふくろの味があったり。インド人がチャイに親しむこの感覚は、日本人にとっての味噌汁のような存在に近いのかもしれません。固定概念に捉われず、色んな具材を入れてアレンジする自由さも似ています。

「チャイはインド人のソウルドリンクなんだよ!」

インドの方にチャイのことを質問すると、誰もが笑顔で熱っぽく教えてくれました。ああ、みんな心からチャイが好きで、インド人の誇りなんだな……。外国人の私たちに、身振り手振りで一生懸命チャイの魅力を伝えようとしてくれる姿に、胸が熱くなりました。

インド・コルカタ チャイ巡りの旅