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台湾烏龍茶ができるまで 台湾烏龍茶ができるまで

別名「香りのお茶」とも言われる台湾烏龍茶は、一体どのように作られているのでしょう。台湾を代表する名産地・阿里山の茶園を取材させていただきました。

お茶作りの現場に密着!

茶畑で摘み取られた新鮮な生葉は、複雑な工程を経て香り豊かなお茶へと変化していきます。
約1日半もの時間をかけて丁寧に作られる台湾茶づくりの流れをご紹介しましょう。

@ 茶摘み

標高1,300mに位置する阿里山の茶園では、ちょうど冬摘み茶づくりの最盛期。朝7時30分、たくさんの女性たちが、急斜面の茶畑をものすごい速さで移動しながら、茶摘みに励んでいました。

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  3. 茶摘みは手作業で行います。すばやく手を動かしながらも、みんなでおしゃべりしたり、歌を歌ったりと、和気あいあいとした雰囲気。
  4. 急斜面に広がる茶畑。年配の女性たちも慣れた様子で斜面をよじ登ります。
  5. 摘みたての生葉。みずみずしく張りのある感触です。
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  7. 収穫した茶葉の計量に並ぶ女性たち。

A 日光萎凋(いちょう)

摘みたての茶葉は、すぐに製茶工場へ運ばれ、お茶作りがスタート。茶葉は屋外で平らに広げられ、太陽の光に晒して萎凋します。

萎凋とは、茶葉に含まれる水分量を適度に蒸散させながら、茶葉自体が持つ酸化酵素の働きによって発酵を促すこと。この過程を経ることで、青々としていた生葉の香りが、花や果実にも例えられる独特の芳香に変化していきます。

  1. 日光萎凋の様子。雨や曇天の日は室内で熱風を送って萎れさせますが、やはり晴れた日に天日に晒して萎れさせた方が品質の良いお茶ができるのだそう。
  2. すべての葉に均等に日光が当たるよう、茶葉同士が重ならないように注意して広げるのが大事。

B 室内萎凋(いちょう)

日光萎凋を終えると、今度は室内に茶葉を移して萎凋を行います。大きな板の上に茶葉を広げて静置しておくのですが、途中、広げた茶葉を2時間おきに数回攪拌(かくはん)します。攪拌によって茶葉同士がこすれ合うことで、発酵が促進するのだそう。

お茶の品質を左右する重要な作業のため、この工程を担うには相当な経験と技術力を要します。

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  2. 板の上に広げた茶葉が格納されている可動式の棚。ここで茶葉はしばらく静置されます。
  3. この道30年の萎凋の達人・陳(ちん)さん。攪拌のタイミングは、陳さんが茶葉の香りを嗅いで判断。「香りの雑味が消え、クリアになったところで攪拌するのがポイント」と陳さん。
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  5. 静置した茶葉を攪拌しているところ。最初の攪拌は軽くやさしく行い、だんだんと力を強めていくのだそう。攪拌を重ねるたびに、最初の青臭みがなくなって、花や果実のような香りに変わっていきます。
  6. 萎凋が進んで柔らかくなった茶葉。水分が抜けて茶葉の表面はマットな質感に。

C 揺青(ようせい)

最後の攪拌は、竹でできた円筒型の撹拌機に茶葉を入れ、ぐるぐると回転させて行います。

  1. 円筒型の攪拌機に茶葉を入れ、蓋を閉めて回転させます。
  2. 攪拌機から出てきた茶葉を5.4kgずつ竹ざるにのせ、再び攪拌。「発酵しやすいように、ふんわりと重ねて空気の通り道を作ってあげるのが重要」(陳さん)なのだそう。
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  4. 撹拌後、竹ざるの上に広げられた茶葉は、棚に格納して約3.5時間静置します。茶葉の重みに竹ざるの重みも加わり、1枚の重量は7kg弱。棚に運ぶだけでも重労働です。

D 殺青(さっせい)

揺青後、茶葉の香りと味わいが良い状態になったら、それ以上発酵が進まないように殺青を行います。

殺青は、萎凋した茶葉を高温の釜で炒ることで、茶葉の酸化酵素の働きを止める作業です。お茶の香りと味わいをベストな状態でキープするための工程であり、これもまた大変な技術を要します。

  1. 釜の温度は約300℃。茶葉をのせたざるを折り曲げつつ、こぼさないように釜の中へ一気に茶葉を放り込んでいきます。難なくこなしているようで、実は非常に難しく訓練が必要です。
  2. ドラム型の釜がぐるぐる回転しながら、茶葉を均一に加熱。300℃の釜の中に手を入れて、茶葉の状態をチェックしつつ、釜の温度や殺青の分数を判断します。
  3. 殺青が終わったら、釜を傾けて熱々の茶葉を取り出します。

E 揉捻(じゅうねん)

殺青が終わったら、すぐさま茶葉を取り出し揉捻機へ。すり鉢のような機械で上から圧力をかけながら揉み込み、茶葉を細長く撚(ひね)っていきます。

茶葉を揉むことで、茶葉の細胞に微細な傷が付き、味や香りなどおいしさのエキスが抽出されやすくなります。

  1. 揉捻の様子。あまりに強い力で揉み込んでしまうと、おいしさのエキスが茶葉表面に出すぎてしまい、何煎も楽しめなくなってしまうため、揉捻の強弱度合いも品質を左右する大事なポイント。
  2. 揉捻を終えた茶葉は、乾燥機へ。これが本格的な乾燥の1回目となります。
  3. 上が殺青前の茶葉。下が殺青、揉捻を経て1回目の乾燥を行った後の茶葉。だいぶお茶らしい形状になってきました。

F 包揉(ほうじゅう)と玉解(たまとき)

揉捻した茶葉は、大きな布で包み、ぐるぐると巻いてボール状にしていきます。これが台湾茶特有の丸い粒状の茶葉の形を作る「包揉」の工程です。

機械で圧力をかけながらきつく巻き上げられて締まった茶葉は、ドラム型の機械に投入され、乾燥しつつバラバラにほぐされます(玉解)。

この包揉と玉解を20回近く繰り返し、茶葉を丸めていきます。こうして丸い形に仕上げることで、お湯を注ぎ足すたびにゆっくり茶葉が開き、何煎も楽しめる烏龍茶になるのです。

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  3. 約15kgの茶葉を布で包み、きつく縛り上げてボール状にします。わずか数秒で簡単にやっているように見えますが、実は想像以上に難しく、慣れるには訓練が必要です。
  4. 茶葉のボールを平揉機(へいじゅうき)にかけ、圧力をかけながら揉み込んでいきます。
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  6. 包揉した茶葉をドラム型の機械に投入して、乾燥させつつ茶葉をほぐします。ここでも重要なのは、茶葉の水分量を少しずつ均一に飛ばすこと。茶葉の香りや手の感触、茶葉の形を観察しながら作業を進めます。

G 乾燥

茶葉の形がちょうど良い状態に丸まり、程よい水分量になったところで毛茶(もうちゃ※日本でいう荒茶:あらちゃ)が完成。毛茶は仕上げの焙煎を行い、最終製品が出来上がります。

  1. 仕上げの乾燥をしているところ。茶畑で摘まれた生葉がお茶になるまで丸1日半。茶葉の量は、なんと4分の1にまで減ってしまいます。
  2. 完成した茶葉。ころんと丸い形に仕上がっています。