[ 訪問記 03 ]
個性が生みだす銘茶 サングマ

インドのみならず世界を代表する紅茶産地ダージリンからの現地訪問レポート第3回目。今回は名園サングマより。

■マネージャーハウスでの過ごし方

ホテルなどの宿泊施設が限られているダージリン。茶園を訪問する際にマネージャーハウスのゲストルームを使わせていただくことは、お茶関係者の間では比較的一般的です。

多くのマネージャーハウスでは、夕方から21時頃の夕食までの2〜3時間、もてなす側のホストとゲストが居間に集まって談話する習慣があります。今回の訪問時はインドをはじめとする旧英領諸国最大のスポーツイベントの一つ、クリケットのワールドカップ開催中ということもあり、スポーツの話題などで楽しい時間を過ごしました。

■名園サングマのお茶づくり

今回、ルピシアだより取材班は、ダージリンきっての名手と呼ばれ、サングマのみならず、シンブーリ、バラスンのスーパーインテンデント(複数の茶園を総括して管理する上位のマネージャー)を務めるジャー氏に案内していただき、サングマ茶園での製茶風景に立ち会いました。

マネージャーハウスでの夜の談話もそこそこに、早めの夕食をすませて夜9時過ぎに工場に入ると、周囲は大量の茶葉が発する青い香りでむせ返るよう。工場全体がまるで生き物のように呼吸しているかのごとく、不思議な生命力に満ちているのが感じられます。そんな中で、精力的に指示を出しながら、茶葉の状態を細かくチェックするジャー氏は活き活きと動き回っています。工場の上のフロアにある萎凋(いちょう)室の床にあけられた穴のダクトを通して、下のフロアにある揉捻(じゅうねん)の機械に運ばれた新芽は、回転しながらもみ込みまれるごとに、更に強い香りを放っていきます。その後15分から20分間とやや短めの酸化発酵を経て、巨大なドライヤーで乾燥させれば春摘み紅茶の完成です。

広い工場の中をステージのように動き回るジャー氏は映画の主役(スター)のよう。いつも場の中心に立ち、茶葉の状態を冷静に観察しながら細かい指示を出し続けていました。

シーズンが開始したばかりのため、夜中の10時過ぎには作業は終了しましたが、ピーク時には延々と深夜にまで同様の作業が続きます。完成したばかりの春摘み紅茶の出来映えに満足した様子のジャー氏は「次はぜひ徹夜でセカンドフラッシュの製茶に立ち会ってみたら」と笑いながら誘ってくれました。