「今年のファーストフラッシュはとてもいいね」
3月中旬〜下旬にかけて、製茶シーズンが始まったばかりのダージリンの茶園を訪問したルピシアのスタッフ一行に、キャッスルトン茶園マネージャー・ガジメール氏をはじめとする多くの関係者は、口を揃えたようにその訳を教えてくれました。
「大きくふたつの理由があります。2月に茶樹の発芽準備に十分に必要な量の雨が降ったこと。もうひとつは、新芽が芽吹く3月に雨が降らないため、発育がとてもゆっくりしていること。新芽の成分は昼夜の寒暖差と乾燥の中で凝縮して、香り立ちが良く、甘みと奥行きのある味わいに仕上がっている。ただ生産量の少なさと製造の遅れが、我々の悩みの種だよ」と。
ここ数年間で、ダージリンの環境は大きく変化しています。茶摘みの女性が新芽を収穫しながら、携帯電話で通話している風景も珍しくありません。ダージリン名物だったでこぼこ道も舗装や修復がされており、なによりエリア全体が明るく活気に満ちています。さて、お茶に関してはどうなのでしょう?
「10〜20年前と比較して、ダージリン紅茶は茶葉本来の新鮮な香りや味わいをより楽しめる青みのある仕上りに変化しています。しかし本質は変わりません」とはマーガレッツホープ茶園のチャトルジー氏。
彼のようにダージリンの作り手の多くは、種から育てた昔ながらの中国種の茶樹を大切に守る一方、最新の品種改良技術によるクローナル品種の作付けにも意欲的に取り組むなど、伝統を守りながらも、最先端でいることへの努力を怠らないのです。