ルピシア グルマン通信10月 Vol.103 ルピシア グルマン通信10月 Vol.103
ジャガイモ料理の新定番 クネーデル ジャガイモ料理の新定番 クネーデル

今回のテーマは「クネーデル」。「ニセコにおいしいジャガイモの季節がやってきます。今年はちょっとおしゃれなジャガイモ料理を考えていまして……」とヴィラ ルピシアの植松シェフ。さて、「クネーデル」……って、なに?

クネーデルとは

「クネーデル(クヌーデルまたはクロースとも)はドイツ語で「だんご」の意味で、ドイツやオーストリアなどで食べられている料理です。一般的には茹でたジャガイモや固くなったパンを潰し、その生地を丸めて茹でたもので、肉料理の付け合わせとして用いられます。生地の中に肉や魚の擦り身などを混ぜることもあります。同じく、ジャガイモを使った北海道の郷土料理に「いももち」がありますが、こちらは生地を丸めて焼くところが異なります。

「2年ほど前、ドイツを旅した際に食べたクネーデルがとてもおいしかったんです。モチモチした食感が日本人の好みにも合う。今回はルピシア流クネーデルを作ってみたいと思いました。でももう少し情報が欲しいんですよね」と植松シェフ。

ドイツ料理のことはドイツの方に聞くのが一番。世界中から人が集うニセコですから、ドイツ出身の方がいらっしゃらないかと探したところ……いらっしゃいました。

国際交流員のエマさん

地域のみなさんから「エマさん」の愛称で親しまれているエマヌエル・ノイバウアさん(31歳)。ドイツ・ベルリン郊外で生まれ育ち、中学校から日本語を学び、高校卒業後1年間、兵庫県の養護施設で福祉活動に従事。帰国後、大学で日本学を学び、2016年、ニセコ町役場国際交流員として赴任。現在はJRニセコ駅の観光案内所でニセコを訪れるお客様のお世話をされています。

「ニセコへ来てからあまりドイツ料理を食べていないので今日は楽しみです」と流暢な日本語で話すエマさんをお招きして、クネーデルについてお聞きしました。

「今日はクネーデルについていろいろ教えてください。さっそくですが、ドイツの方なら誰でもクネーデルのことは知っていますか? 一般家庭でもよく作る料理ですか?」と植松シェフが切り出しました。

「はい、ドイツ人なら誰でも食べたことがあると思います。クネーデルにはさまざまな種類があります。パン生地を使ったもの、ジャガイモを使ったもの、甘いものもあります。子供のころはお母さんが手作りしていましたが、最近は家庭で一から作るということは少なくなっていると思います。スーパーマーケットで冷蔵や冷凍のクネーデルを買ってきて、家で茹でて調理します。それとは別にインスタント、粉状の生地の素も売られていますね。私はジャガイモベースのクネーデルが好きです。生のジャガイモを混ぜるとおいしいんです」というエマさん。「今日はジャガイモベースのクネーデルをご用意していますよ」という植松シェフの言葉にエマさんの笑顔がこぼれます。

ジャガイモ料理の新定番

キッチンでクネーデルを作る植松シェフの様子を熱心に見守るエマさん。「今日のクネーデルにはエマさんが好きな生の擦り下ろしたジャガイモも混ぜ合わせています。そうすると食感が良くなります。さぁ、そろそろ完成です」という植松シェフの言葉に促され、テーブルへ。

「ドイツではもっと大きいと思いますが、今日は日本人サイズにアレンジしました(笑)。ソースは鴨モモ肉と栗、キノコの煮込みです。召し上がってみてください」といよいよエマさんに試食していただきます。

「いやぁ、おいしいですねぇ。鴨もやわらかい。このソースはドイツで食べるシャスール(狩人風)ソースに似ていますね。おいしいです」とナイフとフォークが止まらないエマさん。

「その通り、これはイタリア産のマルサラ酒を使った狩人風ソースです。さあ、どんどん召し上がってください」と植松シェフ。

あっという間に煮込みと3つのクネーデルをたいらげたエマさん。皿に残ったソースをパンできれいに拭い、完食です。

「ふぅ、ごちそうさまでした。本当においしかったです。クネーデルには今日のような濃厚な味わいのソースが合います。しっかりとした料理にしっかりとしたビール。これがドイツ流です(笑)」と満足げなエマさん。

「あっ、ウチのビールもお出しすればよかったかな(笑)? 日本では馴染みが薄いと思いますが、おいしいニセコのジャガイモでおいしいクネーデルを作ってみたかったんです。いつの日か、日本にクネーデルが広まった時、『クネーデルといえばルピシア』と言われるようになったらいいですね。エマさん、今日はいろいろ教えていただいてどうもありがとうございました」と植松シェフ。エマさんの笑顔を見て、手応えをつかんだ様子です。

つるんとした丸いクネーデルをナイフで切り、ソースと絡めて口に運ぶと、モチモチとした食感とソースの旨みが口いっぱいに広がります。さすがヨーロッパ有数のジャガイモ王国ドイツの郷土料理だけあって、ニセコのジャガイモとの相性も抜群。さあ、植松シェフが作るニセコのジャガイモ料理の新定番。ぜひお試しください。