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日本茶で美味しくすこやかに 「氷水出し緑茶」の魅力を語る 日本茶で美味しくすこやかに 「氷水出し緑茶」の魅力を語る

近年、日本茶の生産者や愛好家の間で話題になったのが「氷水出し緑茶」。氷水を使って浸出した日本茶のアイスティーは、苦みや渋みが少ないおいしい風味だけでなく、エピガロカテキンやテアニンなどの成分を有効に摂取する方法だとわかってきたためです。静岡県・島田市金谷の農研機構にてお茶の研究をされている物部真奈美先生に、「氷水出し緑茶」の魅力やおすすめのいれ方などを伺いました。

「氷水出し緑茶」とは?

お茶生産の本場、静岡県・島田市金谷の農研機構 果樹茶業研究部門にて、茶葉の成分と身体に与える影響についての研究や、緑茶をおいしく毎日飲み続けることによりもたらされる、様々な生体効果の解明にかかわっている物部真奈美先生。何かを治す「薬」ではなく、毎日何気においしく摂取でき、心身ともに整えられる「食品」を探していたところ、たまたま、茶に行き着いたといいます。

物部先生がおすすめする、おいしくて体によいお茶のいれ方のひとつが「氷水出し緑茶」です。1時間ほどで簡単に作れることも、「氷水出し緑茶」の魅力です。


「氷水出し緑茶」の作り方 「氷水出し緑茶」の作り方

癒やしのアイスティー

どうして氷水を使った「氷水出し緑茶」がおすすめなのでしょうか?

それは日本茶の健康成分として有名なカテキン類の中でも、特に体を防御する機能をサポートするエピガロカテキンと、お茶のリラックス成分として知られるテアニンという、2つの癒やし成分が含まれているからです。

すこし専門的になりますが、近年、カテキンの一種、エピガロカテキンは、体の中に侵入したウイルスやバイキンを食べるマクロファージ(大食細胞)や、異物の種類を連絡・報告する樹状細胞などの働きをサポートする働きがあることが分かってきました。

また新茶や玉露などの上級茶に多く含まれるアミノ酸の一種テアニンは、ストレスをやわらげたり、安らかな睡眠を補助するなど、リラクゼーションをサポートする成分です。

お湯などで日本茶をいれた場合、覚醒作用のあるカフェインや、抗菌作用など別の働きを持つカテキン類、エピガロカテキンガレートの働きと拮抗してしまい、これらの成分は本領を発揮しきれません。

しかし、氷水を使って日本茶をいれることで、特にカフェインの成分量が少なく、エピガロカテキンとテアニンの癒やし成分が、より効果的に働くアイスティーになります(図表参照)。

日本茶の水出しアイスティーやこの「氷水出し緑茶」は、いずれもエピガロカテキンガレートとカフェインを減らして飲む方法ですが、一番の違いは氷水を使うことで、カフェインの量をぐっと減らせることです。カフェインは温度が上がると、その分だけ増えていくことがわかっています。


温度による4種の緑茶成分の違い 温度による4種の緑茶成分の違い
日本茶の癒やし成分であるエピガロカテキンとテアニンについて80℃湯(2分)での浸出量を100%の基準にした場合。0.5℃程度の氷水(60分)のアイスティーでは、テアニンで約80%、エピガロカテキンは50%程度と、比較的しっかり浸出されます。対してカフェイン、エピガロカテキンガレートは約20%程度。特にカフェイン溶出率は10℃で浸出した場合と比べて半分以下になります。

おすすめのお茶は?

水出しや氷水出しアイスティーは、日本茶にかかわらず紅茶や烏龍茶など、どんな種類のお茶でもおいしくいただけます。

以下の特徴を参考に選んでみてください。

新茶(日本茶)

通常の煎茶と比較して、「風味」「香気のよさ」もありますが、一番の特徴はテアニンなどのうまみ成分のアミノ酸が多いこと。「氷水出し緑茶」でもしっかりうまみのある味わいを楽しめます。

玉露

水出しや氷水出しアイスティーのいずれも失敗なく、おいしくいただけます。

玉露やかぶせ茶、抹茶など被覆栽培されたお茶はエピガロカテキンが少なく、テアニン、カフェインが多く含まれています。テアニンのリラクゼーションやストレス軽減を期待するのであれば「氷水出し緑茶」がおすすめです。エピガロカテキンの効果という意味では新茶や通常の煎茶をおすすめします。

釜炒り茶(九州)

通常の煎茶と同様です。煎茶に比べて浸出効率が悪いため、浸出時間は長めにすることをおすすめします。

ほうじ茶、番茶(夏摘みのお茶など)

もしテアニンのリラックス効果を期待するのであれば、ほうじ茶、番茶(夏摘みのお茶など)はおすすめしません。ほうじ茶は、アミノ酸が加熱などによる変化(メイラード反応)によりほぼなくなります。番茶は一番茶にくらべるとテアニンが少ないためです。

烏龍茶、紅茶

もしエピガロカテキンの効果を期待するのであれば、烏龍茶、紅茶の水出しや氷水出しアイスティーはあまりおすすめしません。製造工程にカテキンが酸化される工程を含むため、カテキンがほとんどない、もしくは減っているからです。

「氷水出し緑茶」を飲む時は?

同じ茶葉で目的やシーンにあわせて使い分けが可能です。

急須やポットを使っていれる、お湯や熱湯を使ったお茶では、カフェインで体が元気に活発になります。またエピガロカテキンガレートの抗菌作用や抗酸化作用が期待できます。

これはいわゆる交感神経が優位な活気に満ちている、仕事中や食事中のお茶におすすめです。

それに対して水出しや氷水出しアイスティーは、副交感神経優位の休息時におすすめします。

特に「氷水出し緑茶」は、通常よりも大幅にカフェインが少ないので、おやすみ前のお茶にも最適です。

今後の日本茶について

私が所属している農研機構では、様々な茶品種を育成し、新しい日本茶の可能性について研究しています。いま、注目の品種は赤い緑茶「サンルージュ」です。

「サンルージュ」はお茶の葉の中に、通常の緑茶品種は含んでいないアントシアニンを含んでいるので、レモンなどを少し入れて酸性にすると綺麗なピンク色になります。

また炭酸水に「サンルージュ」の茶葉を入れて冷蔵庫に置くと、きれいなピンク色の炭酸水になるため、レモン酎ハイをこの「サンルージュ」の水出しアイスティーで割るとピンク色の酎ハイになります。

こういった日本茶の「おいしくて新しい」飲み方を、健康的に提案できればと考えています。

「お茶とカフェイン」に関する 栗原久先生のインタビュー記事はこちら ルピシアのお茶はこちら