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注目の健康成分 カフェインが元気を応援 注目の健康成分 カフェインが元気を応援

お茶はもちろん、コーヒー、チョコレートなど、カフェインを含む飲食物は、世界中の人々を広く魅了しています。しかし、カフェインの効果や利点はあまりよく知られていないのではないでしょうか? 医学博士としてカフェインを薬学的側面から、またお茶やコーヒーが登場するポピュラーソングを分析するなど文化的側面から、多角的に研究される元東京福祉大学教授・医学博士の栗原久先生にお話を伺いました。

カフェインについて

カフェインについて、お茶に含まれている覚醒成分ということをご存知の方は多いと思います。

もともとカフェインは、植物が昆虫に食べられたり病気を防ぐための天然の成分の一つだと考えられています。19世紀にドイツでコーヒーから発見され、続けてお茶から見つかりました。他にカカオナッツ、ガラナナッツ、コーラナッツ、マテ葉に含まれています。

現在、カフェインは主に二つの分野で利用されています。一つは食品成分としてお茶やコーヒー、チョコレートや清涼飲料の形で楽しまれているもの。ほかに、さまざまな薬の成分として、補助的にブレンドされています。

お茶などカフェインを含む食品が世界の至る所で、日常生活の中で楽しまれている理由は、カフェインが適度に脳を刺激し、体内にさまざまな影響を及ぼすこと。またそのことが、心身にとって何らかのメリットを発揮しているからです。

カフェインのメリットは?

カフェインは、人や生物に備わっている能力が、疲労やストレスなどで下がった時に「心身を平常時の状態に戻す」働きをサポートします。

食品に含まれるカフェインのメリットは以下のとおりです。

香りやアロマのよさ

カフェイン自体は強い苦みがあって無臭ですが、カフェインを含む食品全般はお茶、コーヒーなど香りや苦み・渋みなどがミックスされたアロマが心地よく感じられ、特別な嗜好品として食生活を豊かにしています。

元気を応援・適度に脳を興奮させる

体や心が疲れているときも、本来のパフォーマンスにゆっくり戻してくれます。また課題に対してチャレンジする意欲が向上することも、ラットによる実験で検証されています。その結果、眠気覚ましとして、また学習などの作業効率の向上などにも優位に働きます。

スポーツに

運動能力の向上に役立つことが、アスリートなどが協力した様々な実験で判明しています。トライアスロン大会などのドリンクにカフェインを入れていることも。よく言われる脱水作用は微々たるもので、通常のお茶やドリンクに含まれている量では影響しません。

美容に

心肺機能が向上したり血行がよくなることで、美肌や冷え性、むくみなど美容に関するメリットが認められます。利尿作用はデトックスにも有効と考えられています。

他においしくものを食べられる健胃作用もカフェインの大きなメリットです。

摂取する際に注意したいのは、カフェインによって向上される心身の働きは、大量に摂取した場合も含めて、カフェインを利用する者が持つ本来の能力以上にはならないという点です。

お茶を飲む目安の分量は?

紅茶や緑茶、烏龍茶など1杯(100ml)のお茶には、カフェインが約20mg含まれています。

カフェインの有益性を発揮させる目安は、成人で1日200mg。

食事や休息時など、通常の飲み方をしている限りは、自然に飲める量といえます。

ただし、夕方以降のカフェイン摂取は睡眠に悪影響を及ぼす可能性があることに注意が必要です。

小学生以上の子どもについては、体重1kgあたり2.5mgが摂取の上限目安です。それよりも年齢が下の未就学児は、肝臓の代謝機能が大人よりも低いなどの理由で、カフェインが入ったお茶を飲むことや食品を食べることはおすすめしません。また人それぞれに発達の違いなどもあるため、小学生以上の子どもについても「お茶は体に良い」などの理由をつけて飲ませることはやめましょう。

親や周囲の人が楽しんでいる風景から、子ども自身が自発的にお茶を飲みたい気持ちになったとき、自然な形で喫茶の習慣が伝承される。これは動物には見られない、人間に特有の、お茶の大切な文化的側面だと考えています。

カフェインと文化

お茶などのカフェインを含む食品や嗜好品が、多くの文化の中で社会的に受け入れられている、そして愛されている大きな理由の一つに、アルコールやニコチン、ほかの向精神作用のある物質と比較して、精神的にも肉体的にも依存状態になりにくいことが挙げられます。

「歌は世につれ、世は歌につれ」との諺がありますが、私は社会がカフェインを受け入れてきた様子を知るため、明治時代の唱歌「茶摘」から、現代のラップミュージックまで、お茶やコーヒーが登場するポピュラーソングの歌詞を分析してみました。

戦前から戦後のポピュラーソングには、喫茶店など場所に関する描写や歌詞が多く見受けられます。出会いや社交の場を、紅茶やコーヒーがどこかロマンチックに演出したのでしょう。

お茶については、たとえば男女の恋愛関係の象徴として、また家庭や安らぎの象徴として使われることも多く認められました。

しかし1960年代から現代にかけて、コーヒーや紅茶だけでなく、エナジードリンクの覚醒作用が強調されることが多くなっていきます。

これは社会全体が、長時間の労働や受験勉強、競争など、覚醒作用を求めている世相を反映していると、私は考えています。

理想的な楽しみ方は?

近年、缶コーヒーやエナジードリンク、またカフェイン錠剤など、カフェインを手軽に取り入れられる商品が出回っています。

しかし、短時間で大量のカフェインを摂取する場合、不安や不眠、パニックや震えなど、いわゆるカフェイン急性中毒と呼ばれるデメリットのリスクが高まります。専門家としてはあまりおすすめできる状態ではありません。

ここであらためて見直したいのが、時間をかけて一杯をいれる、伝統的なお茶の飲み方です。

お湯を沸かし、茶葉や茶器、添えるお菓子、飲む人の様子や体調なども考えながら、一杯のお茶をいれる。

このすべての動作を通じて、お茶を楽しむ。またそれが親から子どもへ、友人へとゆるやかな輪になってつながっていく。喫茶の習慣の伝承は、極めて人間的、また文化的な現象です。

こういったお茶の文化こそ、ゆったりと適度に、また健康的にカフェインを楽しむ方法として、ひとつの理想形だと思うのです。

「氷出し緑茶」や健康に関する 物部真奈美先生のインタビュー記事はこちら ルピシアのお茶はこちら