夏に野菜がおいしい訳
植松シェフ:今日は中村先生に夏の野菜と食事について、漢方的な見地からお話を伺いたいと思い、お邪魔しました。どうぞよろしくお願いします。
中村さん:こちらこそ。基本的に季節ごとの野菜、そして人間も自然との関係の中にあります。夏野菜の力をいただくことで暑い夏を乗り切るのは、極々自然なことです。たとえば、夏においしいナス科の野菜。おいしいだけでなく、体の内熱を下げ、脱水症状にならぬよう、水分補給の役割も果たしてくれます。同様に果物の酸味は発汗や喉の渇きを抑え、体液の流れを整えてくれるのです。
植松シェフ:体が自然に夏野菜を欲するということですか?
中村さん:はい。野生動物同様、人がその食物を欲するのは、頭で考えてではなく、匂いや味に由来します。今の自分に必要なもの、それはリアルタイムに変わりますが、そうして欲したものをおいしく感じるようになっているのです。
植松シェフ:一方、トンカツの需要が一番高まるのも真夏という説がありますが(笑)。
中村さん:それは夏場、摂取する食材にタンパク質が不足しがちだからでしょう。タンパク質は秋以降の食材に多く含まれます。不足しがちなタンパク質を補うため、トンカツをおいしく感じると考えられますね。