世界のミルクティー

インドやイギリスなど、紅茶をたくさん飲む国ではミルクティーがよく飲まれています。でも、その楽しみ方にはそれぞれのお国柄が見られます。なかには私たち日本人が驚くようなスタイルを持つ国も。各国のミルクティー事情をちょっぴりのぞいてみましょう。

世界のミルクティー
世界中で愛されているミルクティー

 全世界で生産されるお茶の総量は年間430万トン(2011年・国際茶協会統計)。1杯に2gの茶葉を使うとすると、実に毎日59億杯ものお茶が世界中で飲まれていることになります。そのうちの約8 割を紅茶が占めているといわれ、さらに紅茶消費量の多い国ではミルクと砂糖を入れる飲み方が主流のよう。ミルクティーは世界中で愛されているのです。

「毎日、お気に入りの店でチャイを5〜6杯は飲んでいるよ」
「チャイのない生活?考えたくもないね」
 出張先のインドで出会った人々は口を揃えてこう言います。紅茶生産量・消費量ともにNo .1のインドで日々飲まれているお茶は、たっぷりのミルクで煮出し、スパイスを入れた煮出しミルクティー、マサラチャイ。建物がひしめき、大勢の人でごった返すインド・コルカタには、あちこちにチャイを売る店、チャイスタンドがあります。むっとする熱気とともに漂う、スパイスとミルクの入り交じった独特のほの甘い香り。仕事のちょっとした合間に立ち寄って、周囲と立ち話をしながらチャイを飲む人々。そんな風景が街の至るところで見られます。
 これほどまでにチャイが飲まれているのは、インドが灼熱の国であることと無関係ではありません。水分と砂糖がエネルギーになり、スパイスが胃腸の働きを高め、疲労を回復させてくれます。小さめのクリ(茶器)で、きゅっと一杯チャイを飲み干して、また仕事に戻る。チャイはインド人の元気の素なのです。

5杯、6杯は当たり前!チャイは国民的飲料

 紅茶好きの国として知られているイギリスでも、紅茶にはミルクがつきもの。ヨーロッパで最初にお茶にミルクを入れることを思いついたのは、17世紀フランスのサブリエール夫人だと言われていますが、古くから牛乳を飲む習慣があったイギリスでミルクティーの人気が出たのは、ごく自然な流れだったのでしょう。彼らはミルクに負けないコクと香りのあるお茶を求め、最初に持ち込まれた緑茶から、烏龍茶、紅茶へと徐々にシフトしていきました。
 19世紀、植民地であるインド・アッサム地方での茶園の開拓に成功すると、ミルクティーによく合う紅茶の開発に邁進。お茶を早く濃く抽出できるブロークンタイプやCTC製法の茶葉が考案されたのも、「美味しいミルクティーを飲みたい!」というイギリス人の情熱のたまものだったのです。

ミルクに負けないお茶を求めて

 お茶発祥の地、中国大陸に住む遊牧民や山岳地方の人々にも、ミルクを入れてお茶を飲む習慣があります。
 モンゴルで日常的に飲まれるミルクティー、スーテイ・ツァイは、紅茶ではなくプーアル茶を使ったもの。磚茶(だんちゃ=プーアル茶などを固めたもの)を削って煮出し、ヤギなどのミルクと岩塩を加えます。ブータンやチベットで飲まれているバター茶には、これにヤクなどの乳で作られたバターが入ります。「ミルクティーがしょっぱいの!?」と驚くなかれ。野菜の育たない北国の高原や山岳地帯においては、栄養を効率よく摂れる合理的な飲み物なのです。私たちの感覚では、スープにイメージが近いかもしれません。

遊牧民の栄養補給に塩入りミルクティー
十国十色のミルクティー

 紅茶の文化が、その土地ならではのミルクティーに変化していった国も。
 ミャンマーやマレーシア、香港などアジアの各地では、植民地時代にミルクティー文化が流入。ただ、これらの国では新鮮なミルクが手に入りにくかったため、今でも缶入りのコンデンスミルクやエバミルクを使った濃い風味のミルクティーが人気です。
 現代では、タピオカやココナッツミルクを入れたり(台湾・珍珠奶茶)、生姜を加えたり(マレーシア・ニョニャティー)と、世界中で様々なスタイルのミルクティーが楽しまれています。

世界のスタイルをお手本に ミルクティーを作ってみよう
はちみつバター茶

プーアル茶を紅茶に変え、蜂蜜を加えて飲みやすくしています。塩バターキャラメルのようなこっくりした味わい。お腹がすいたときのおやつにどうぞ。

ニョニャティー

ニョニャ料理とは、マレー族と華僑の食文化が融合した料理のこと。コンデンスミルクの甘さを生姜のぴりっとした風味が引き締めます。体もぽかぽかに!

さらにミルクティーを楽しむ